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本書のあとがきには「会社再生の実務を、解説書やノウハウ本とは異なり、小説形式で紹介」とあるが、
私は、スリリングでかつ、しみじみとした人情劇としてハラハラドキドキしながら一気に読み終えた。
ストーリーのテンポの良さ、場面展開の見事さ、登場人物のキャラクターがリアルに浮かび上がってくる台詞回しに、
まるでテレビドラマを見ているように、ページをめくるのがもどかしいほどの思いだった。
主人公は、昼は男勝りの元気が良すぎるコンサルタント、夜はおっちょこちょいの銀座のホステス相馬明日美。
私は気がつくと、彼女を女優の長澤まさみさんに100%イメージを重ね合わせて読み進んでいた。
実はこの本は、読み手が思い思いに登場人物の配役を考えて読むと、さらに楽しめる気がする。
例えば私の配役だとこうなる。
明日美に想いを寄せる、優秀だがちょっと頼りない同期の篤は上地雄輔さん。
山本屋の跡継ぎで彼女の大学の後輩である山本義清は水嶋ヒロさん。
その父親で、経営に行き詰まり十一代も続いた老舗旅館を手放す危機に追い込まれる人のいいオヤジさん・山本義雄は小林稔侍さん。
明日美の敵役として登場する陰のある美人整理屋である不破雨月は小雪さん。
アダム・コンサルティングの田原社長は佐藤浩市さん、その幼なじみで何かと彼をサポートする銀座のママ・麗子には真矢みきさん。
……こうなると完璧に私の妄想が爆走してしまっているが、読者それぞれが勝手に自分の配役を楽しむのも悪くない。
そんな映像が、目の前にありありと浮かんでくるような巧みな描写が
「会社再生実務」というお堅い世界を描いている小説であることを忘れさせる。
とはいえ、柱となるテーマは「会社再生」の物語であり、著者はその専門家だから、
もちろんその方面の専門用語もふんだんに出てくる。
「民事再生法」などは序の口で、
「サービサー(債権回収会社)」「第二会社方式」「リスケジュール(返済条件の変更)」「DES(デット・エクイティ・スワップ)」等々、
これまで耳にしたことのない言葉がたくさん出てくる。
しかしこれらの言葉を、著者は登場人物達の会話のやりとりから、自然に素人が理解できる形で伝えてしまう。
ビジネス書的に解説されたら、放り出したくなる「漢字や横文字満載の無機的な業界専門用語」。
しかし、それが語られるに必然的な場面で「長澤まさみさん」や「上地雄輔さん」が「ひらがなことば」でかみ砕きながら口にする。
難解なことばも、老舗旅館を守るとともに、律儀に商売してきた十一代目の親父さんを窮地から救い出すんだという、
全体を貫くストーリーの一環として聞かされるから、こんなにもすんなり頭に入ってくるのだろう。
難しいことをそう感じさせずにすんなり伝えてしまうのはたやすいことではない。これは「スキル」だ。
フリーアナウンサー 梶原しげる (本書巻末より抜粋) |